エレベータが目的の階でピタリと止まってくれるのは日本の中小企業が開発した「位置決めスイッチ」のおかげだった!

今までエレベータが目的の階でピタリと止まってくれることを、当たりまえだと思って疑問に思ったことがありませんでした。

でもよく考えてみると、不思議ですよね!?

エレベータは一日の間に何回も往復してるし、ワイヤーも温度差や経年劣化で多少の伸び縮みがあるはずだし、多少はズレることがあってもおかしくない。

けれども、目的の階で寸分くるわずにピタリと止まってくれます。ズレて段差ができてしまうなんてのを見たことがない。

じつはこれ、日本の中小企業が開発した「位置決めスイッチが活躍しているようです。

その世界シェアは「70%」なのだそうです!

しかも、その会社は大企業ではなく、中小企業なんですって!

すごいですよね!

どんな会社で、どんな社長なのでしょうか?

 

 

世界シェア7割を誇る中小企業 「驚きの秘密」を特別公開! 間接部門の肥大化が開発者の創造性の芽を摘む メールで物事を決めるのは禁止!? 69歳を過ぎても現役で厚遇!? ほか

 日ごろ、私たちが何気なく使っているエレベータ。そのエレベータが目的の階で数ミリのズレもなくピタリと止まるのを「当たり前」だと思っていませんか? 実はこれ、都内のある中小企業が手掛ける「機械式精密位置決めスイッチ」のおかげなのですが、同社はこの分野で世界シェア7割を占めているといいます。従業員100人程度ながら、世界シェアトップを維持し続ける秘訣とは何か――好評発売中の講談社現代新書『世界に冠たる中小企業』(黒崎誠著)第4章より、以下、その一部を特別公開します。

 中小企業の得意分野は、大企業の参入してこないようなニッチ市場とされる。だが、その多くは最初から存在していたものではない。ほとんどは、中小企業が自らの手で新たにつくり上げたものだ。ニッチ市場で中小企業が生き残っているといった甘いものではなく、中小企業が自らの汗と努力によって、ニッチ市場という新しい市場を創出したといっていい。日本の中小企業によるニッチ市場から誕生した製品の中には、世界トップどころか、その製品がなければ世界の経済活動に支障をきたす例も数多くある。

・なぜエレベータはピタリと止まるのか

 メトロール(東京・立川市)は、工作機械、半導体製造装置などの機械が正確に作動する位置を測定し、制御する「機械式精密位置決めスイッチ」をつくっている。一見、我々の生活とは縁のないように思えるが、たとえば、エレベータが数ミリの狂いもなくピタリと止まるのは、実は同社のスイッチのお陰だ。最近では脳神経外科手術分野の医療機器にも使われ、多くの難病の患者を救済している。この分野で世界シェア70パーセントを有し、オンリーワン企業に近い。従業員は100人をわずかに上回る中小企業にもかかわらず世界トップシェアを維持できる秘密は、モノづくりに命を懸けるといっても過言ではない高度の技術への挑戦と、人事、経理等の管理部門はゼロといった徹底した合理的な経営にあった。

 工作機械の代表ともいえる切削工作機械の先端には、金属を削るための刃が付いている。もし刃が正確な位置に取り付けられていなかったら、いくら優秀な工作機械でもその高い性能を発揮できない。また、刃は極めて硬い特殊金属でできているが、それでも何百万回、何千万回と使われればいずれ刃こぼれするし、位置もずれてくる。これに気づかず稼働を続けていれば、機械は故障する。かつては機械の微妙な動き、音の変化などからこの道何十年のベテラン社員が位置のずれや刃こぼれを見つけ出し、経験とカンで調整してきた。

 だが、メトロールの開発した「位置決めスイッチ」を使用すれば、製品が不良品になるほど刃こぼれが進むと機械は自動的に停止する。不良品が発生する直前まで位置がずれても機械は止まる。この結果、ベテラン社員が絶えず機械をチェックする必要もなくなって生産ラインの自動化を可能とし、二四時間の稼働と生産性向上につながった。メトロールのスイッチは、300万回以上使っても位置のばらつきが0.0005~0.001ミリ以内にとどまる。刃こぼれもほぼ同じ測定範囲で検知する。価格は機種によって異なるが、数千円から10万円台。位置決めスイッチは、メトロールのような機械的機能を利用するものと、光、電磁波を利用するものの二つのタイプに分かれる。

 光、電磁波のスイッチが大量に使用された時代もあり、おもに電気メーカーが製造していた。それらは光や磁力を増幅させて制御する一方、熱に弱いという決定的な弱点を持っていた。工作機械は、高い熱だけでなく電磁波も発生させる。さらに機械によって削られた金属の破片が飛び散り、機械から漏れ出す油も性能に悪影響を与え、精度に狂いが生じる。

 ところが、メトロールの機械式スイッチは、光や電磁波を利用しないから熱にも強く、油や削られた金属が飛び散るような過酷な条件下でも、ほぼ精度が変わらない。しかも、価格は光や電磁波のタイプの10分の1程度と極めて安価。リーマンショックで同社も売り上げが半分以下にまで減った。しかし、同社の売り上げの半分以上を占める輸出の回復によって2年後にはリーマンショック前にまで回復させた。2014年度にはリーマンショック前を上回る15億円に達し、同社の持つ国際競争力の強さを見せつけた。中小企業でも世界で圧倒的な技術力を有していれば、未曾有の不況さえ乗り切り安定した経営を続けられる典型例だろう。

・大手企業の技術盗用に猛抗議

 メトロールの創設者は、社長の松橋卓司の父親である章だ。章は東京大学工学部精密工学科を卒業した技術者。大手カメラメーカーに就職し、ここで内視鏡の開発に携わり、世に出た初号機の実地設計を担った。現在ほど医学が進歩しておらず、胃がんはおろか胃潰瘍で死亡する人たちも多かった時代。胃の中をカメラで見ることができれば、多くの患者の命が救われると思い、技術者としてのやりがいを感じていた。だが、同社の幹部は内視鏡そのものにまったく理解を示さず、それどころか「内視鏡の実験で人身事故が起きたら、わが社の名前に傷が付く」と開発に圧力をかけてきた。このため7年間も民生品のカメラ開発に従事する傍ら、会社に隠れて研究・開発を続けた苦労の末、成功にこぎつけた。開発した内視鏡はその後健康保険が適用され、光ファイバーへと進化を遂げ、この会社を内視鏡で世界トップのメーカーに成長させた。

 だが、「胃の中の写真を撮りたい」と願う医師とともに内視鏡の構想設計に携わった初期の開発者たちは多大な功績を挙げたにもかかわらず、経営の中枢に関わることも社内の表彰を受けることもなく、その功労に対して会社は極めて冷淡だったという。こうした会社の方針への反発もあり、「額に汗して、苦労し世の中に貢献した技術者が報われる会社を創りたい」として章が設立したのが、メトロールだ。メトロールの社名は、メジャー(計測)とコントロール(制御)を合成してつけた造語だった。

 メトロールには69歳を過ぎても現役として厚遇されている社員や、常勤ではないものの80歳になっても週に数回出社して20代、30代の若い社員と一緒になって新製品の開発や製造の現場で働いている社員もいる。額に汗する技術者を大切にしたいと設立したメトロールの原点は今でも固く守られている。

 会社設立後間もなくして、自社開発した重要な技術を大手企業に盗用される事件が発生した。特許を取っていないこともあり、相手の大手企業は抗議に耳を貸そうともしなかった。怒った章は、その会社のトップに直接抗議の手紙を出して実情を知らせライセンス交渉に成功した。これによって、メトロールは存亡の危機を免れた。技術を盗まれるような事態に陥ったら敢然と立ち向かう果敢な精神は、今でも脈々と生き続けている。

・受注者がリーダーを務め計画生産は皆無

 メトロールの生産方式は、1人が受注から生産、検査、包装まで行う「1個流し」。完全な受注方式を採用し、見込み生産は一切していない。「3週間先の仕事も決まっていないのが、わが社最大の特色」(卓司社長)なのだ。在庫は1個も持たず、1個単位の注文に応じてつくっていく。このような生産方式を可能にさせているのは、1個の注文が来たらそれに見合った数量の部品を自動的に発注できる同社独自の受注生産システムを確立していることが大きい。この方法であれば、部品があまることも不足することもないからだ。社長の卓司は「常にリアルタイムで対応し、計画生産は今後もまったく考えない」とまで言い切る。

 どのようなユーザーからの問い合わせや注文に対しても、価格の見積もり、受注から納入日などの生産計画の決裁までを1日で済ませる。この結果、国内であれば最短数日でユーザーへ納入できるだけでなく、海外でもほとんどの地域に1週間以内の納入を可能にしている。

・社内メールで物事を決めるのは禁止

 社員は社内専用のクローズドシステムのブログを共有することによって営業情報を絶えず共有しているから、情報共有のための会議も開かない。社員が社内でコーヒーを立ち飲みしながら会話する中で、会社の重要事項の多くが決まっていく。社内のメールでのやり取りで物事を決めることは禁止され、決めるときには必ず顔を合わせて行う。

 何時でも誰でも簡単に打ち合わせができるよう、事務所内にはセクションごとの部屋も壁もない。部・課長用の部屋どころか社長室もない。肩書きに関係なく全社員がフラットな一部屋で仕事をしている。社長は事務所の真ん中で事務を執っているから、必要なら誰でも社長に直接話しかけることができる。

 工場事務部門は工場の2階にあるが、事務所と同じようにフラットな1部屋方式。工場と事務所は、4つの階段で繋がっており、製造部門の社員が、事務部門と打ち合わせをする必要があればいずれかの階段を上がればよい。逆に事務部門が製造部門に行くには階段を下りれば済む。システムだけをつくっても人間関係がうまくいかなかったら絵に描いた餅に終わる。社員同士のコミュニケーションを円滑にするためコミュニケーションならぬ飲みニケーションを大切にし、幹部社員は会社名義のクレジットカードを持っており、社員との必要な飲み会の費用は会社が支払う。飲みニケーションの場が、社内のコミュニケーションを活発にし、さらに活力源となっている。

 700種もの製品をつくるのに必要な部品は7000種に達するが、工具の工夫や作業の平準化によって高度な熟練の必要がなく、ほとんどの社員が一定の教育・訓練を受けることで精度の高い製品をつくり上げる生産システムを確立させたことも、同社の強さの要因だ。

 組み立てに携わる社員約60人のうち、約80パーセントは工場近くのマンションや一戸建てに住む普通の主婦を中心としたパートの女性たちだ。「会社は女性でもっている」のだ。女性の勤務時間は、子育てをしながらでも働けるよう朝9時30分から午後4時30分まで。工場内は女性の健康と身体のことを考えて床暖房。厚生年金、失業保険などの社会保険に加入し、ボーナスも年3回出る。パートの女性社員は「勤務時間の短い社員」と位置付けている。

 年に3回は全社員が集まってパーティイベントを開くが、開催時刻は勤務時間の終わらない午後4時から。30分は勤務時間とし有給となる。パーティは社員が企画して原則として全員参加。終了は5時30分。子供を保育園に迎えに行く時間などを考慮し、家庭と職場を両立させるためだ。パート社員は原則として1年契約であるが、よほど勤務に向かないなどの理由がない限り継続を認められ、ほぼ100パーセントが継続し昇給もする。「わが社ではパートの女性社員にも重要な役割を果たしてもらう」と女性社員の能力を最大限引き出し、働きやすい環境を整えていることが大きい。

 仕事上の改善、改革の提案の数は年に300件を超え、社員数の3倍に達する。この中にはパート社員からのものも多くある。ほとんどの社員が会社の方針を理解し、これに応えていることがはっきりする。メトロールは、社員にやさしいと言えるが、その一方で「仕事に関しては妥協のないプロの集団」との厳しい姿勢で臨む。1個流しの生産方式は、ただすぐれた製品をつくるだけでなく中間検査も行い、製造工程の中で不良品が外部に出ないよう責任を負う。しかも、製品は1000分の1ミリの精度を求められるから、プロ意識が高くないとやれない。

・管理部門なんていらない

 メトロールでは、人事、総務、経理などの管理部門にはそれぞれ一人しか配置されていない。人事評価は、営業、製造の現場を受け持つ各部長が担当する。現場のことを一番よく知っているのは部長なので、公平な人事になるという。総務の仕事も直接部門の社員が権限を委譲されて一人二役、三役を兼ねてこなしている。海外出張も稟議書の提出など必要なく、クレジットカードを渡たされ、口頭の了解で認められる。法律、経理、社会保険といった専門的な知識を必要とする分野は、弁護士、税理士、社会保険労務士などの専門家に依頼している。間接部門の担当が各一人で十分やっていけるのはこのためだ。

 創業者の章は大手カメラメーカーで苦労の末に画期的な内視鏡を構想した初代開発者であるが、さほどの社会的な評価も与えられず、恩恵に与ったのは開発に反対した管理部門だった。「メーカーにとって間接部門の肥大化は開発者の創造性の芽を摘む」との経営哲学は一歩だに揺るがない。長年にわたって面接などによる採用方式をとっていたが、入社した社員の中には自由闊達な社風に適応できない者も多く、この方式では本当の能力が見抜けないことを痛感。現在では心理分析の専門家の立ち会いの下で面接を実施している。この結果、採用費用は増えたが、入社早々にすぐれた成績を上げる社員が現れるといった目に見える効果が現れるようになった。

 中国、インド、台湾にも海外拠点を置いているが、その目的は生産でなく販売。現地スタッフを幹部に登用して決定権も委譲し、日本人と同じ待遇。英語、中国語などのホームページを立ち上げて広告も掲載し、海外60ヵ国以上と取引をしている。輸出の多くは円建て。大企業と中小企業は生きる道が違うと、創造的な強い企業を目標とし、大企業を目指す気持ちはない。

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黒崎 誠(くろさき・まこと)1944年群馬県生まれ。時事通信社に入社後、一貫して経済畑を歩み、経団連、日銀、旧大蔵省などを担当したほか、リクルート事件など大型経済事件も報道してきた。宮崎支局長、福島支局長、編集委員、解説委員などを歴任。2004年に退社し、現在、帝京大学経済学部教授。著書に『世界を制した中小企業』(講談社現代新書)、『起業家の条件』(平凡社新書)など多数。
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 著者= 黒崎 誠
『世界に冠たる中小企業』
(講談社現代新書、本体価格800円+税)

引用 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150226-00042186-gendaibiz-bus_all&p=2

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